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「やだわあ、店長さん、謝るのはこっち。色々ありがとう……あたしも気長に探してみるわ。まだまだ時間はあるんだもの」 「……まあ、何十年も前の本を当てもなく探すなんて、土台無理な話よね」  川端ミズエが勝ち誇ったように言う。 「本当に大事なら、ちゃんと手元に置いておくべきだったのよ。こんな下らないことに他人様《ひとさま》を巻きこむのはやめなさい。そういうところ、昔からあんたはバカよね」  バカ、のところを特に強調している。部屋の空気がさらに冷たくなった。視線を感じてあたりを見回すと、さっき玄関で会ったしのぶの父親が廊下に立っている。憂いを帯びた目つきで俺たちを見つめているが、この状況でも仲裁に入ろうとはしない。俺以外は誰も彼の存在に気付いていなかった。 「……帰るわ。用事も済んだし」  坂口しのぶは太い息を吐きながらつぶやいた。拳を固く握りしめているが、まだ自制心を失っていないようだ。俺も段ボールの蓋を閉じて立ち上がる。つくづく長居したくない家だった。 「あら、そう。あんたの怖いご主人にもよろしくね」  しのぶのこめかみに太い血管が浮いた。火でも吐きそうな勢いで振り返ったが、 「川端さん!」  意外にも声を上げたのは栞子さんだった。 「下らないことじゃありません」 「は?」 「一度なくした本を取り戻したいと思うことは、ちっとも下らなくありません。訂正して下さい」  今度こそ俺にも確信が持てた――この人は腹を立てている。この川端ミズエに対して。 「……一体、なんの話をしているの?」  しのぶの母親は口元だけで困惑気味に笑っている。俺には栞子さんがなにに反応したのか分かる。この人にも人知れず取り戻そうとしている本がある。かつて母親が置いていった『クラクラ日記』だ。 「どうして犬小屋を今でも取ってあるんですか」
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