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 峰月庵を予約したのは、綾香のほうだし、二間つづきの離れで酒食を摂《と》るということは、隣に夜具の用意をしておくということが含まれていた。秋津が切子ガラスの酒器に残っていた冷酒を飲み干して、襖《ふすま》をあけると、驚いたことに、綾香はのべられた夜具の枕許に、つくねんと後ろむきに座っていた。 「あなた、いつあの娘に手をつけたの?」  あの娘、というのが、仙道香津美のことであるということに気づくのに一瞬、間があった。秋津は話題が大原憲司の轢き逃げのことから一転して、秋津の女性関係のことに移ったのにためらい、また綾香のような女でも、小娘のことが気になるのかな、と怪訝《けげん》に思って、 「どうして、そんなことを聞くんですか?」  できれば、そんな話題は遠去《とおざ》けたかった。 「気になるわよ。きれいな娘さんじゃないの。まさかあなた、処女をひらいたというわけじゃないでしょうね」 「もしそうだったら、不都合でしょうか」 「私はちっとも困らないけど、あなたのほうが困るんじゃないの。何か暗い感じがしたけど、男を惹《ひ》きつける眼をしていたわ。ああいう娘って、まっしぐらにのめりこんでゆくんだから、生命がいくつあっても足りないわよ」 (まるで、自分のことを言ってるみたいだ)  秋津は、苦笑した。夏宮綾香も、自分でいうほど遊び感覚で男を愉しむタイプではなく、どちらかというと、まっしぐらにのめりこむほうである。  秋津は無言で、浴衣に着がえた。  まるで家に戻った亭主のようである。  夜具にはいると、まだそこにつくねんと座っている綾香の手を引き、 「綾香さん……どうしたの、今日は」 「あの娘の眼の色が、まだ私の頭の中に残っているわ。あれは女の歓《よろこ》びを知りはじめたものの、ひたむきな眼の色よ」  秋津は起きあがって、綾香の肩を抱いた。接吻を交わし、二人とも夜具の上に斜めに倒れこんだ。 「ああ……則文……よその女を、抱いちゃいや」  綾香はようやく、物狂おしい接吻を返してきた。
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