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 新しい勤め先は、スナック「須磨」。ママと、支配人とあたしの三人だけという小さな職場だ。ママのご主人であるマスターは閉店まぎわに顔を出すだけだった。由美ちゃんの紹介で行くことになったバイトの最初の日、なじみ客の一人が、あたしにセックスに関する冗談を言った。あたしはそれを聞いてむしずが走り、泣きそうになった。年の近い子たちとはそういう話も出来ていたが、親に近い年齢の人間がそういうことを言うのは我慢がならなかった。あたしの沈んだ顔を見て、支配人は店の隅であたしに言った。 「あけみ、こういうところではな、ああいう話がいちばん罪がないんだ」  あたしにはまだその意味はわからなかったが、気を取り直してそのお客のそばに戻った。しばらく話すと、ほんとはいい人なのがわかってきた。彼は、初日のお祝いだと言って、あたしに五千円チップをくれて帰った。あたしはなんだか、大きな仕事を一つ成し遂げたような気がした。  そして、その支配人がとても上手に仕事のこつを教えてくれることも知った。細身で淡々とした彼は、いつも早めに店に来て、インスタントでない蝶タイをゆっくり締めてからお客を迎える。この人となら新しい仕事でも大丈夫だ、と思ったのがあたしの転職の理由だった。  依夫はトラックの運転手をしていた。二トントラックに乗って、依夫の友人と三人で佐世保のディスコまで遊びに行ったりもした。佐世保のディスコは外国人がいっぱいで、長崎とはぜんぜん違っていた。あたしは黒人の踊りに見とれ、それと同時に、白人ってなんてリズム感がないんだろうと思った。踊ることしかとりえのないあたしと依夫は、踊ってばかりいた。そのころは、それで楽しかった。  家賃が五千円のアパートは、丸山のもと女郎屋で、鍵もかからない六畳一間だった。共同の炊事場には小さなガスこんろが一個しかなかった。ほとんどは外食だったが、たまにそこでインスタントラーメンをつくって食べた。洗濯は相変わらず水で手洗いした。  となりの部屋にはやくざの夫婦が住んでいるようだった。その夫婦のけんかはとても激しく、妻が殴られて泣き叫んでいるのまで全部聞こえた。けんかがおさまってしばらくの沈黙のあと、今度はけんかに負けない大きなあえぎ声が聞こえてきて驚いたこともあった。そのころはそれを依夫と二人で笑っていたが、まもなくあたしは彼にも暴力を振るうくせがあることを知った。  その晩も酔ってあたしに因縁をつけだした依夫は、何度もあたしを殴った。小さな子どもが小さな拳でぐずって母親を殴るときのように、本人もたぶんどうしようもない気持ちでいるのだろう、そんな殴り方だった。でも依夫はもう幼児ではないのだ。あたしはたまらず部屋から逃げ出した。露地を走りながら、このまま帰らなくてもいいと思った。依夫が追いかけてくるのを後ろに感じたが、こっちに酒の入っていないぶん、逃げ切れる自信はあった。 「あっ」  角を曲がったら、目の前が火事だった。野次馬に取り囲まれたその家からは大きな火柱が立っていた。 「この!」
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